【レポート】福島県広野町 鹿嶋神社浜下り祭「たんたんぺろぺろ」2019 第一部(イントロダクション)
はじめまして。
今場 雅規(こんば まさのり)と申します。
マツリズムには2016年頃から少しずつ関わっており、高木神社例大祭や祭サミットなどスポット的なお手伝いをしてきました。
今年、団体の体制が強化されるということで、関与のレベルを上げ、「マツリテーター見習い」を拝命することになりました。
普段は都市計画のコンサルタントとして勤務しているほか、居住している東京都荒川区では地域をテーマにしたトークイベントを企画運営したり、私有地の活用プロジェクトの支援をしたりなど、騒がしく過ごしております。
どうぞお見知りおきください。
今回は、マツリズムがお邪魔させていただいたお祭りについて少し詳しくレポートさせていただきます。
お祭りの細かい流れはもちろん、地域の事情や参加者の感情の動きなどをできるだけお伝えするため、異例の3部作でお送りします。
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今回のお祭りの場所は、福島県双葉郡広野町。
西側には山、東側には海。そしてそれらをつなぐ浅見川が流れるのどかな町です。
写真 広野川の流れる広野町
この地区には、「タンタンペロペロ(略称:タンペロ)」と呼ばれ、地域に愛され続けてきた浜下り祭という神事があります。
マツリズムは、昨年に引き続いて2019年もこの浜下り祭に参加させていただきました。
なお、昨年のお祭り参加については、代表の大原の記事を東京新聞に掲載いただいています。
https://www.matsurism.com/posts/4349970
どんな町なのか?
まずは基本的な情報です。
福島県は東西に広く、東から3つのエリア、「浜通り」「中通り」「会津」に分かれます。
広野町が立地するのは、東の「浜通り」で、いわき市の北側にあたります。
図 福島県内の地方区分(福島県公式サイトより)
浜通りといえば、2011年東日本大震災による津波被害に加えて、福島第一原子力発電所に近いことから、原発事故による影響が特に大きかったエリアです。
震災直後の時期に、「浜通り」という名前を報道等で耳にする機会も多かったのではないでしょうか。
ここ広野町も大部分が緊急時避難準備区域に指定され、全町避難が行われていました。
図 人口推移。町の人口は露骨な減少カーブを描きます。(第五次広野町町勢振興計画より)
町民が減少傾向にある一方で、原発の除染や廃炉作業に従事する作業員の居住は多く、町内居住者の一定割合を閉めるのが作業員の方々という独特な人口構成があります。
彼らは住民登録を行なっていない場合が多く、統計に表れにくいと聞きます。
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2011年の津波は、広野駅の常磐線軌道を境として、東側を浸水させました。
図 広野駅の線路を境に東側は津波により浸水(広野町「東日本大震災の記録 Ⅰ(完全版)」より)
公式資料から、広野町における被災状況を引用します。
表 東日本大震災による被害状況(平成26年3月31日時点)(出典:同上)
数字だけでは、どれだけの被害であったのかを想像しにくいかもしれません。
二日間の滞在中に接した方の中にも、津波により自宅を失ったり、今は町外に住んでいたりという方々が複数いらっしゃいました。そんな感覚です。
それゆえに、祭りの担い手の多くが、その氏子地域の範囲外にお住まいという、他の地域ではおよそ考えにくい事情が、当たり前のようにある地域です。
写真 現在の広野駅東側の様子
震災後、8年が経過しました。
津波が押し寄せた駅東側には、今も不気味な静寂が漂っています。
何もない、文字通りの更地が広がる中で、復興事業である広野駅東側開発によって、駅前の区画だけ不自然なほど整然としています。
この区画には、今回利用させていただいた宿泊施設「ハタゴイン福島広野」や、サテライトオフィス「広野みらいオフィス」などが立地しています。
2019年度からは広野駅東側開発の第2期事業として、パナソニックホームによる住宅用地の整備が行われるそうです。
どんなお祭りなのか?
浅見川の下流地域「下浅見川地区」の氏神様である鹿嶋神社と、上流地域「上浅見川地区」の氏神様である大滝神社は、それぞれ男神と女神の関係にあります。
七夕伝説と同じように、その2人が年に一度だけ一緒になれる機会がありました。
それが、浜下りの神事が代々行われてきた4月8日。
神事では、両神社からの神輿がそれぞれの社を出発し、渡御中に2柱が出会った後、ともに浜へ下りて「潮垢離(しおごり)」をします。
潮垢離とは、海水でみそぎを行うことです。
◼️お祭りの断絶と復活
今ではお祭りの開催日は4月第一日曜日とされていますが、浜下りが行われていた4月8日は、かつては曜日を問わない固定の日付でした。
それゆえ、地元の方々に聞くところでは、平日開催の場合は、氏子地域の小学生が通う学校までわざわざ大人が迎えに来て、「ほら、祭りだから行くぞ」と連れられて行ったのだとか。
このお祭りは、福島民友新聞社が選定する「福島遺産百選」に、2007年(平成19年)に認定されています。
写真 広野町駅舎内に掲げられた「福島遺産百選」認定証
2007年に「ふるさとの宝です」と認定されたわずか3年と少しの後に、東日本大震災という未曽有の大災害が起こってしまったことを考えると、ただただ震えるばかりです。
災害の前年である2010年を最後に、浜下り祭が開催されない状態が長く続きました。
復活に向けた地元の苦労の末、昨年2018年に、満を持して8年ぶりの浜下り神事が執り行われました。
祭りの復活は多くのメディアで取り上げられ、復興の象徴として扱われたようです。
https://www.asahi.com/articles/ASL493FKBL49UGTB007.html
以上、第一部ということで、町やお祭りの紹介をさせていただきました。
第二部でお祭り準備の様子を、第三部でお祭り当日の様子を報告させていただきます。